マルコおいちゃんのドイツ生活ああだこうだ事典 |
≪Bar di Marco≫から旧名に復帰しました。 |
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マルタ・アルゲリッチ(Martha Argerich)は、アルゼンチン出身の天才ピアニストです。だから本当はアルへリッチと発音しましょう。
彼女は非常に情熱的かつエモーショナルな演奏で有名です。それから有名なのが、いわゆるドタキャン。
十数年前、苦労して手に入れた彼女のコンサートのキップが、案の定無駄になった苦痛の記憶がわたしにもあります。まあ、どうせドタキャンであろうとあまり期待していなかった、それがよくなかったのかも知れません。
わたしの所有する彼女のCDのなかで個人的にベストと考えるのが、このミーシャ・マイスキー(Mischa Maisky)との競演盤です。
去年の四月第一日曜日のことである。わたしたち家族は、妻の実家をたずねて帰宅する途中だった。
「乳猪」とは乳飲み子ならぬ「乳のみブタ」である。しかしレストランで「乳猪」といえばこれすなわち「焼乳猪」、つまり「子豚の丸焼き」のことである。
ややこしいのは広東語で「焼」は「炙る」こと、北京や北方では「煮る」ことである。前回の「紅焼肉」の「焼」は、北方語であることがここでわかる。
古代から綿々と伝わるという由緒正しきシナ料理の王道を歩く料理がこれである。
お察しの通り元来は祭祈用に具されるものであるが、香港・広東では結婚式に欠かす事のできないめでたい一品である。ゆえに香港・広東系のレストランではおおよそ常時食せる、と考えてよろしい。
しかし日本ではあまりお目にかかれなかったし、ドイツにもない。「乳猪」と銘はうっていても、ただの親豚の肉のキレッパシをオーブンでローストしただけの物が多く失望させられる。
そのインチキさ加減は「北京ダック」に似ている。ドイツで本物の「北京烤鴨」にお目にかかったことがないし、もちろん口福にあずかったこともないのと同様である。
この「乳猪」の美味さ加減の基準は、「北京烤鴨」とほぼ同じ、つまり皮がパリパリであること、肉はあくまでも柔らかくジューシーであること、これにつきる。
だから皮がねっとりとしていたり、肉がパサパサで噛み切れない、などという「乳猪」や「北京烤鴨」などがテーブルに出てきたら、シナ人ならこう叫ぶであろう。
「こんなもの、日本人にでも食わせておけ!」と。
だから諸君もそのシナ伝統料理の王道であるこの「焼乳猪」のことをよくよく理解しておいてもらわねば困る。
さきに登場してもらったことのあるナポリの友人である。彼女はやっと定職を得て北イタリアに赴任していったことは述べた。( もう晩秋の気配 )
イタリアで定職を見つける事の困難さを日本人の皆様は想像もできまい。
彼女は、大学卒業後十余年にして初めて定職を得たのである。その悦びや如何、とこれは容易に想像できるであろう。
しかも教職である。公務員である。だからその困難さは非常なものがあったのである。十余年来、彼女は教職希望のウエイテイング・リストにその名を連ねていた。
そしてそのリストの上位者から順に職をえてゆくというシステムだそうな。そのためには離島での臨時教師をして点数をかせぎリストのランキングを上昇させねばならなかった。
またそれだけでは家計の用に充分ではなく、旅行者相手のイタリア語講師などもして日銭を稼いで来もしたのである。
元来、故郷の近くで職を求めていたが、そうもうまくはゆくものではない。ナポリから列車で8時間の北イタリアの辺鄙な養護学校に空きが出て、迷った末にやっとのことで決心したらしい。
その結果の文化衝突的居心地の悪さが彼女にあったことは、すでに述べた。
しかしその後、ハナシを詳しく聞いてみたところ実に興味深いものであったので、ここに紹介する。
その学校には、ある臨時雇いの女性教師がいて彼女が得た職をもとから狙っていたのだという。
そして言うには、貴女のせいで私はその職を得られなかった。わたしにとってその職がいかに大事なものであるか貴女にはわかるまい。あなたなんかまたナポリへ帰ってしまえばいいのだ。
と、面と向かって直接はげしい言葉で言ったのだという。
日本人のあなたには想像もおつきにならないであろう。ナポリ人の彼女も深く傷ついたそうだ。
だがしかし、このハナシを聞いたわたしは思わず妻と顔を見合わせてしまった。そして妻もまさにわたしと同じ事を考えている事を察したのである。
「紅焼肉」(ホング・シャオ・ロウ)とは「豚肉の角煮」あるいは「東坡肉」、また沖縄では「ラフテー」といわれるもののことである。シナ語で「紅焼」とは醤油で煮込んだ色合いを示している。また「肉」といえばすなわち豚肉のことであってそれ以外ではない。牛や鶏なら「牛肉」「鶏肉」、あるいは人なら「人肉」とかならず書き表す。それほど豚肉はシナでは普通の肉なのだ。
「東坡肉」とはもっぱら杭州のそれを指す。食通でもあった詩人の蘇東坡がその地方の知事をしていたころ編み出したといわれているからだ。
この「紅焼肉」は毛沢東の大好物だったといわれている。毛はそれを食べぬと脳が働かぬ、といって毎食でもそれを要求したようだ。
しかしあまり健康食品とはいえない。もちろん脂肪のせいである。なぜなら普通は「三枚肉」とよばれる脂肪と赤みが交互に重なったバラ肉を使用するからだ。ちなみにシナ語ではそれを「五花肉」(ウー・フア・ロウ)という。こちらのほうが文化的な香りがする。さすが豚肉食大国世界一だけのことはあるな。こと食う事にかけては一枚も二枚も上手なのである。
五花肉
作り方はきわめて簡単。