マルコおいちゃんのドイツ生活ああだこうだ事典 |
≪Bar di Marco≫から旧名に復帰しました。 |
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最近は歳のせいか食に対する興味が減退している。もう一方の欲望は、もうずっと前から消滅にむかってひたひたと後退している。そろそろ年貢をキチンと納めねばならない時期なのであろう。嗚呼、もう秋か!と嘆いた詩人のキモチが心に沁みてならない。
それでもイタリア食品専門店なぞをのぞくと、ムラムラとした、そう嫉妬の念に近い感情がわきあがってくるのを抑えるに苦労をする。
そうしてみると、食欲全般にたいする興味が減退しているのではないようだ。イタリアの天地にあふれるエロスは、どうも食にも有効であるようだ。
イタリア食品専門店は、レストランほどは多くはないが、ドイツにもある。
サルメリア(Salumeria)とよばれるイタリア式食品専門店は、ハムやソーセージなどの加工肉、チーズ、ワイン、パスタ等のイタリア料理の必需品が揃えられており、そのショー・ウインドーを眺めるだけでも、なにやら贅沢な心豊かなキモチになれる店である。
ある街には、かっては外国人労働者として沢山のイタリア人をよびよせたイタリア系の会社があり、それらの労働者のためのスーパー・マーケットさえある。そこはまるでイタリアであり、わたしの(ドイツでは)もっとも愛する場所のひとつに数えねばならない。
わたしのしょっちゅう作るイタリア料理は「Spaghetti al pomodoro」である。またの名を「Spaghetti Napoletana」ともいう。なーに、トマト・ソースのスパゲッティのことさ。
しかし日本に今でもあるという、例の「スパゲッティ・ナポリタン」とは画然とことなるものであるこというまでもない。ありや「五目焼きウドンケチャップ風味」と改名すべきであろうが、あれが大好きという方もおられるようなので深くは追求しない。
わたしもあれが好きではR、がしかし「ナポリタン」を僭称するのが許せないだけなのだ。わたしはもう半分はナポリ人のつもりなのである。
「乳猪」とは乳飲み子ならぬ「乳のみブタ」である。しかしレストランで「乳猪」といえばこれすなわち「焼乳猪」、つまり「子豚の丸焼き」のことである。
ややこしいのは広東語で「焼」は「炙る」こと、北京や北方では「煮る」ことである。前回の「紅焼肉」の「焼」は、北方語であることがここでわかる。
古代から綿々と伝わるという由緒正しきシナ料理の王道を歩く料理がこれである。
お察しの通り元来は祭祈用に具されるものであるが、香港・広東では結婚式に欠かす事のできないめでたい一品である。ゆえに香港・広東系のレストランではおおよそ常時食せる、と考えてよろしい。
しかし日本ではあまりお目にかかれなかったし、ドイツにもない。「乳猪」と銘はうっていても、ただの親豚の肉のキレッパシをオーブンでローストしただけの物が多く失望させられる。
そのインチキさ加減は「北京ダック」に似ている。ドイツで本物の「北京烤鴨」にお目にかかったことがないし、もちろん口福にあずかったこともないのと同様である。
この「乳猪」の美味さ加減の基準は、「北京烤鴨」とほぼ同じ、つまり皮がパリパリであること、肉はあくまでも柔らかくジューシーであること、これにつきる。
だから皮がねっとりとしていたり、肉がパサパサで噛み切れない、などという「乳猪」や「北京烤鴨」などがテーブルに出てきたら、シナ人ならこう叫ぶであろう。
「こんなもの、日本人にでも食わせておけ!」と。
だから諸君もそのシナ伝統料理の王道であるこの「焼乳猪」のことをよくよく理解しておいてもらわねば困る。
「紅焼肉」(ホング・シャオ・ロウ)とは「豚肉の角煮」あるいは「東坡肉」、また沖縄では「ラフテー」といわれるもののことである。シナ語で「紅焼」とは醤油で煮込んだ色合いを示している。また「肉」といえばすなわち豚肉のことであってそれ以外ではない。牛や鶏なら「牛肉」「鶏肉」、あるいは人なら「人肉」とかならず書き表す。それほど豚肉はシナでは普通の肉なのだ。
「東坡肉」とはもっぱら杭州のそれを指す。食通でもあった詩人の蘇東坡がその地方の知事をしていたころ編み出したといわれているからだ。
この「紅焼肉」は毛沢東の大好物だったといわれている。毛はそれを食べぬと脳が働かぬ、といって毎食でもそれを要求したようだ。
しかしあまり健康食品とはいえない。もちろん脂肪のせいである。なぜなら普通は「三枚肉」とよばれる脂肪と赤みが交互に重なったバラ肉を使用するからだ。ちなみにシナ語ではそれを「五花肉」(ウー・フア・ロウ)という。こちらのほうが文化的な香りがする。さすが豚肉食大国世界一だけのことはあるな。こと食う事にかけては一枚も二枚も上手なのである。
五花肉
作り方はきわめて簡単。