マルコおいちゃんのドイツ生活ああだこうだ事典 |
≪Bar di Marco≫から旧名に復帰しました。 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「乳猪」とは乳飲み子ならぬ「乳のみブタ」である。しかしレストランで「乳猪」といえばこれすなわち「焼乳猪」、つまり「子豚の丸焼き」のことである。
ややこしいのは広東語で「焼」は「炙る」こと、北京や北方では「煮る」ことである。前回の「紅焼肉」の「焼」は、北方語であることがここでわかる。
古代から綿々と伝わるという由緒正しきシナ料理の王道を歩く料理がこれである。
お察しの通り元来は祭祈用に具されるものであるが、香港・広東では結婚式に欠かす事のできないめでたい一品である。ゆえに香港・広東系のレストランではおおよそ常時食せる、と考えてよろしい。
しかし日本ではあまりお目にかかれなかったし、ドイツにもない。「乳猪」と銘はうっていても、ただの親豚の肉のキレッパシをオーブンでローストしただけの物が多く失望させられる。
そのインチキさ加減は「北京ダック」に似ている。ドイツで本物の「北京烤鴨」にお目にかかったことがないし、もちろん口福にあずかったこともないのと同様である。
この「乳猪」の美味さ加減の基準は、「北京烤鴨」とほぼ同じ、つまり皮がパリパリであること、肉はあくまでも柔らかくジューシーであること、これにつきる。
だから皮がねっとりとしていたり、肉がパサパサで噛み切れない、などという「乳猪」や「北京烤鴨」などがテーブルに出てきたら、シナ人ならこう叫ぶであろう。
「こんなもの、日本人にでも食わせておけ!」と。
だから諸君もそのシナ伝統料理の王道であるこの「焼乳猪」のことをよくよく理解しておいてもらわねば困る。
わたしは努々研究に怠りないよう心がけてはいるのであるが、いかんせんこの王道にはドイツではありつけない。そこで知り合いの広東人、香港人に尋ねたところ、実に簡単な解決法を教唆してもらうことになった。
オランダに出向くのである。
といってもそんなにたいそうなことではない。我が家からすればフランクフルトに行くよりもずっと近いからだ。広東人、香港人諸君も週末には買い物や本式の広東点心と広東料理を食べに、いそいそとオランダに赴くのだそうだ。
アムステルダムには、ちゃんとしたチャイナ・タウンがある。元来は、英国に移住した香港人が転進してきたということで香港・広東人が多い。
しかしここでも近年、温州人の進出がめだっているのであるが、まあそれはいいとしよう。
しかしアムステルダムまで行かなくともドイツ国境付近にそのめざすレストランはある。
一階はスーパー、二階がレストランである。といっても香港によくみられる飾り付けの少ない事務所のような構えの、ただだたぴろいホールにがさがさ長い食卓とプラステイックの椅子を並べただけの簡単なものである。
がしかし、奥にはいつもキチンと焼き上げられた「乳猪」がぶら下がっているのである。屋内だけを見ていればまさに香港の庶民がよく行く食堂である。
客筋もほとんどが広東人、香港人らしく広東語がわんわんとうなって響くのもまさに香港だ。
オランダ人はプロテスタントであるから、英国人同様に食欲については抑制をきかせている。といってももっぱら味についてであって、量はまったく何の遠慮も感じられない。
ニシンの酢漬けだとかフィッシュ&チップスなどというもが、まあたいそうでかい面をしている社会である。