マルコおいちゃんのドイツ生活ああだこうだ事典 |
≪Bar di Marco≫から旧名に復帰しました。 |
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『鳥たちをめぐる冒険』(黒田昌子訳。講談社、昭52年)は『Adventures among Birds』W.H. Hudson, 1913,の和訳本です。木版画の挿絵が豊富に入った美しい本です。原文は読んでいませんが、こなれた日本語なのでなんの違和感もなく読め、一時はわたしのバイブルでした。
さてその中にはいくつも日本では見られない鳥たちが紹介されていました。
一つめが、「クロウタドリ」索引によれば「Blackbird」とあります。ビートルズの『White Album』に同名の曲があるのをご存知の方は多いでしょう。そこにはその鳴き声もちゃんと録音されています。この曲を始めて聞いた中学生のわたしは、「なんて美しい声なんだろう」としか思わず、その姿がどうかなど思いも及ばなかったのです。
さてその「クロウタドリ」は、ハドスンは次のように紹介しています。
「そして何よりもあのクロウタドリ、黄金色の嘴とフルートの音声を持つ、黒檀色の大ツグミ。」
「私が寝ていたすぐ横の壁の外側に大きなねずこの木があって、ちょうど枕の高さのところにクロウタドリが巣をつくっていた。毎朝三時半から鳥はうたいはじめた。短い間をおいて何度もくり返し、ほぼ三十分もうたいつづけた。」
いろいろと想像してみるのですが、どうもイメージがわきません。挿絵をみても、黒いツグミとしかわかりません。
それがやっとわかったのは、はじめてドイツを訪れた時のことです。ちょうど初夏のころでした。夜もまだ明けぬころ、窓の外のお向かいの庭で何やら知らず美しい鳥の鳴き声が聞こえてきます。その頃はまだ「友達」だった今の家内にあれは何かと尋ねますと、「Amsel」というのだと教えられました。
それが「Blackbird」だと知ったのはずっと後のことでした。そして公園などでよく見かける嘴の黄色い小さなカラスのような、しかしよく見ればツグミの類にちがいない鳥が、そのAmselだと知るまでもまた少しの時が必要でした。
しかし分かってみると、ハドスンが描写した「クロウタドリ」がいかに的確だったかが納得されました。そして和訳の「クロウタドリ」も,
黒くてよく唄う鳥、まさにその通りではありませんか。
いまでは、この「Amsel」が唄いだすのを、それは巣つくりのためのメスの注意を引こうとするオスの求愛の唄なのですが、またオス同士が縄張りを主張しあう啖呵でもあるわけですが、「ああやっと晩春だ、もうすぐ夏が来る」と心をウキウキさせて待つおいちゃんでした。