マルコおいちゃんのドイツ生活ああだこうだ事典 |
≪Bar di Marco≫から旧名に復帰しました。 |
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東独の国境では、もう日が暮れていた。国境警備員と税関職員がきて、ヴィザを売る。さていくらくらいであったものか、あまり記憶にない。三千日本円ほどであったろうか?
しかしそのクールな手際のよさ、さすがドイツと、感心した。
ベルリンに到着したのは、その日の夜遅くだった。
街は暗くほとんど灯りも見えない。
フリードリッヒ・シュトラーセ駅が「国境」になる。そこは「壁」の駅である。
マシンガンを抱え、シェパードをひきつれた国境警備隊員がねんいりに各車輌をチェックしていく。
西への逃亡者を警戒しているのだ。
座席の下、コンパートメント上の天井、人の隠れられそうな場所は虱つぶしにチェックしていく。
その軍用犬のはく鼻息が大きく車輌に響く。みんな息をひそめているからだ。
ホームの上方の金属製のブリッジにもマシンガンをもった隊員が行き来している。ことあらばすぐ発砲する構えである。
そのマシンガンが電燈を反射してにぶく光った。軍靴のコツコツという音が駅のホールに響いた。
ながいながい時間が経過したように思われたが、正味十数分であったかも知れない。
やっと国境警備隊員が去って、列車は次の停車駅、西ベルリン最初の駅、ゾー(Zoo)にむかってゆっくりと走り出した。
1985年5月であった。